口伝口承は、こどもたちの心に残る
こどもの時に聞いた話は、どんなシーンで語られたものでしょうか? 布団に入って母が読む絵本? たき火や暖炉の前での話? 私は印象深く思い出される話は、回りの情景や語り手のトーンなど、五感全てで聞いて体に刻みこまれたのだ思います。
アイヌ文化「ユーカラ」
アイヌ文化における「ユーカラ」は、アイヌの神々や英雄の伝説、自然との関係を詠んだ口承文学です。ユーカラは古くからアイヌの人々によって語り継がれてきましたが、書き言葉がなかったために、これらの物語は口伝で伝えられてきました。代表的なユーカラには、以下のようなものがあります。
- コタンコロカムイユーカラ(コタンコロの神のユーカラ) – コタンコロカムイ(コタンの神)は、アイヌの集落を守る神とされており、このユーカラはその神の物語を語っています。コタンコロカムイは人々を守り、狩猟や漁を成功させるための指導者としても崇められています。
- オキクルミユーカラ(オキクルミのユーカラ) – オキクルミはアイヌの文化における文化英雄であり、人々に狩猟、漁業、農業などの技術を教えたとされる神話上の存在です。オキクルミの物語は、アイヌの人々が自然と共生する知恵や技術を伝える重要な物語です。
- シラルシュペユーカラ(シラルシュペのユーカラ) – シラルシュペは美しい声を持つ女性であり、このユーカラは恋愛物語や家族の絆をテーマにしています。シラルシュペユーカラは、アイヌ文化における家族の大切さや愛の力を伝える物語です。
- ユーカラの中の動物たち – ユーカラには、クマや鷹など、自然界のさまざまな動物が登場します。これらの動物は、アイヌの人々にとって重要な存在であり、自然への敬意と感謝の気持ちを象徴しています。
ユーカラはアイヌ文化の精神性や価値観、自然との深い関わりを伝える重要な要素です。これらの物語を通じて、アイヌの人々は過去から現在に至るまで、世代を超えて知恵や価値観を共有し続けています。
文字のない時代は、知識を伝えるには口から口へが基本です。落語もまた、師匠が喋ることを書き取ったりせず、そのまま体に染み込ませていきます。文字化して固定し確定させていくものではありません。 (中略) 文字化して固定する事で、ある意味死んだ状態になるわけで
(黒崎政男「哲学者クロサキの哲学超入門」)
話に、息を吹き込み魂を与えられる語りが必要だと、考えさせられました。