生まれて最初に見るものが親
鳥が生まれて最初に見るものを親と認識する現象は、「刷り込み(Imprinting)」と呼ばれます。これは、生後間もない時期に特定の刺激や対象物に対して固定的な行動パターンや感情的な結びつきを形成する学習プロセスです。特に、鳥類において顕著に見られ、鶏やガチョウ、アヒルなどがこの行動を示します。
刷り込みは、生物が生存上重要な情報を迅速に学習するための進化的メカニズムと考えられています。鶏の場合、孵化後の最初の数時間から数日間は特に刷り込みが起こりやすい時期で、この間に見た動く物体や聞いた特定の音に強く反応し、それを親と認識して追従する行動をとります。
日本キジの孵化 東京牧場 鳥類担当
鶏の卵は、洗卵しない状態で、一定期間生きています。
有精卵の冷蔵状態ではさらに長期間の保存が可能で、90日冷蔵状態からの孵化も可能です。
孵化後、最初に顔を見せた飼育担当を親だと思う インプリンティングが見られ、個体個別の育成では飼育員に甘える現象が多くみられます。
ただ、キジはうこっけいと異なり、一定期間を過ぎると自立行動が見られます。野生の本能があるのでしょうか?
東京牧場は日本の国鳥でもある日本キジの維持繁殖をしています。
刷り込みの理由
刷り込みによって、雛は親鳥を追いかけることで食物の探し方や危険から身を守る方法など、生存に必要なスキルを学びます。このプロセスは、生物学者コンラート・ローレンツによって詳しく研究され、彼の実験ではガチョウの雛がローレンツを親と認識することで有名になりました。
刷り込みは一度形成されると変更が困難で、その後の動物の行動に大きな影響を及ぼすことが知られています。このため、野生動物の保護や飼育下での繁殖プログラムなどでは、刷り込みの効果を考慮に入れた管理が行われることがあります。
動物行動学の父と呼ばれるコンラート・ツァハリス・ローレンツ
オーストリアの動物行動学者。刷り込みの研究者で、近代動物行動学を確立した人物のひとりとして知られる。息子は物理学者のトーマス・ローレンツ。コロンビア大学で医学を学び始めたがウィーンに戻り医学博士となった。
印象的なものは、「腐敗と同様のプロセスは文明化された人間の中でも起きる」というもの。
1949年に、一般読書向けに動物行動学を説明する著書『ソロモンの指環』を刊行する。
1973年ニコ・ティンバーゲン、カール・フォン・フリッシュと共にノーベル生理学・医学賞を受賞
刷り込み現象の発見は、自らのハイイロガンの雛に母親と間違われた体験からと言われている
観察という古典的な手法が効果的
ローレンツの最も大きな功績は、動物行動の観察という当時は軽視されていた古典的な手法を厳密に用い、科学の名に値するものに仕立てたことである。生理学・解剖学などからはわからない、動物の行動を直接研究する分野が生まれることになった。
観察する事。 動きを真似したり、見なくてもイラストが描けたり・・・。
日々の観察により、違いが見つけられれば、繁殖飼育に大きなきっかけをつかむことができます。
動物の行動は種の維持?
ローレンツは、動物の行動は種を維持するためにあると考えていたが、その後、社会生物学の発展などにより動物の行動は種のためではなく自分自身のため(さらには遺伝子が生き残るため)であると解釈されるようになっていった。