不揃い野菜が嫌われる訳
東京牧場の実験で、自然栽培の野菜=不揃いの野菜と、F1種の大きさが揃った野菜売り場を設定
販売店の意見として「不揃い野菜の販売は、価格付けが難しい。キュウリ1本毎に価格を変更するのは、難しく量り売りでも人件費が価格に転嫁されてしまう」
不揃いな野菜売り場
なぜ、不揃いの野菜が、好まれないのか?
人間が不揃いや不一致を好まない理由は、心理学、生物学、社会学的な要因に根ざしています。これらの要因は、認知的、感情的、そして文化的なレベルで私たちの好みや行動に影響を及ぼします。以下に主な理由を挙げます。
- パターン認識: 人間の脳はパターンや規則性を認識することに適しています。規則性があると、情報処理が簡単になり、新しい情報をより迅速に理解し、記憶に残りやすくなります。不揃いや不一致があると、この処理が複雑になり、認知的な負担が増加します。
- 認知の省エネルギー: 脳は情報を処理する際にエネルギーを消費します。均一なパターンや一貫した情報は、脳にとって処理しやすく、エネルギーの消費が少ないと考えられます。不揃いなものは脳にとって複雑な情報であり、その処理にはより多くのエネルギーが必要となります。
- 情報の処理における効率性: 脳はパターンを検出し、情報を整理することに優れています。均一性や一貫性のある情報は、脳がパターンを素早く検出し、情報を整理するのに役立ちます。一方で、不揃いな情報は脳の処理を妨げ、混乱を引き起こす可能性があります。
- 予測可能性と制御感: 一貫性と均一性は予測可能性を高め、環境や状況をコントロールしているという感覚を与えます。不揃いや不確実性は予測困難であり、それが不安や不快感を引き起こす原因となることがあります。
- 視覚的な好みと感情: 脳は美的な快適さや視覚的な調和を求める傾向があります。均一性や整然としたパターンは、美的な好みに合致し、感情的な快適さをもたらします。不揃いなものは、視覚的な不調和を引き起こし、感情的な不快感をもたらす可能性があります。
- 審美的好み: 人間は美的な観点からも均一性や調和を好みます。対称性やバランスは、多くの文化において美しさの典型とされています。不揃いや不均一性は、この審美的バランスを乱すことがあり、不快感を引き起こすことがあります。
- 社会的影響と同調性: 人は社会的な生物であり、他者とのつながりや社会的な規範に従うことが重要です。周囲の人々が均一なものを好む場合、個人もその傾向に従うことがあります。不揃いなものを好まないことは、社会的な同調性を保つための一種の行動と考えることができます。
- 集団帰属感: 社会的な文脈では、均一性はグループ内の結束や同一性の感覚を強化します。不揃いや個性の強調は、集団からの逸脱と見なされ、排除や孤立の原因となることがあります。人間は社会的な生き物であり、集団に属することで安全や保護を感じます。
- 遺伝的健康: 対称性は、生物学的な健康や適応能力の指標として機能することがあります。動物行動学において、多くの種が配偶者を選択する際に対称性を好む傾向があり、これは遺伝的に健康なオフスプリングを生み出す可能性が高いことを示しています。人間も無意識のうちにこのような生物学的な好みを持っている可能性があります
これらの要因は複雑に相互作用し、人間が不揃いや不一致を避け、均一性や一貫性を好む傾向に寄与しています。しかし、個人差や文化的な違いはこの傾向に多様性をもたらし、すべての人が同じ程度に均一性を好むわけではないことを示しています。