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山林を相続したら名義変更が必要!相続登記と市町村への届出の手続きを解説(2024.4.1より義務化)

相続山林

山林を相続した際は、山林所有者の名義変更が必要です。山林の名義変更は通常の住宅と異なる部分があるため、どのような手続きをしたらいいかわからない人は珍しくありません。この記事では、相続した山林の名義変更手続きについて具体的に解説します。

相続した山林は名義変更の手続きが必要

山林を相続する場合、名義変更が必要です。名義変更の際は、以下2つの手続きを行います。

1.法務局で相続登記を申請する

山林に限らず、不動産を相続した場合は相続登記による名義変更が必須です。相続登記とは、土地や家屋などの不動産の持ち主が死亡し、新たな持ち主を登録するための手続きです。従来の相続登記は任意でしたが、令和6年(西暦2024年)4月1日から義務化されています。山林の「取得を知った日」から3年以内に相続登記をしなくてはいけないため、できる限り早く手続きを済ませましょう。

2.市町村へ届出書を提出する

住居などの相続と異なり、山林の相続には「森林の土地の所有者届出制度」が個別に定められています。相続登記に加え、山林がある市町村へ「森林の土地の所有者届出書」の提出が必要になります。森林の土地の所有者届出書の提出期限は、「土地の所有者となった日から90日以内」です。相続登記よりも短いため、期限を勘違いしないようにしましょう。

相続した山林の名義変更の手順

相続登記と森林の土地の所有者届出書を提出するためには、事前準備が欠かせません。準備段階から提出まで、7つの手順に沿って説明します。

1.「登記事項証明書(登記簿謄本)」を請求する

はじめに、相続する山林の「登記事項証明書(登記簿謄本)」を請求しましょう。登記事項証明書とは、不動産の名義や所在地などの情報が記載された書類です。山林の中には、名義人が親ではなく祖父母のまま放置されているケースがあります。あらかじめ山林の名義を確認しておくことで、スムーズに名義を変更できるでしょう。

なお、登記事項証明書の手続きにはいくつか種類があり、山林の名義確認には「不動産登記」の手続きを行います。請求の手続きは、窓口またはオンラインから可能です。すばやく請求したい人には、オンラインがおすすめです。

▼法務局:登記事項証明書(土地・建物),地図・図面証明書を取得したい方

2.必要に応じて「遺産分割協議書」を作成する

遺産分割協議書とは、どの遺産を誰がどのくらい相続するかを明記する書類です。必ず作成しなければいけないわけではなく、状況によって作成の要否が変わります。

遺産分割協議書の作成が必要遺産分割協議書の作成が不要
遺言書がない上に複数の相続人がいる場合法定相続分と異なる割合で遺産を分割する場合トラブルを防ぎたい場合相続人が1人の場合遺産が金銭のみの場合遺言書通りに遺産を分割する場合法定相続分通りに遺産を分割する場合

遺産分割協議書が不要であっても、後々のトラブルを防ぎたい場合は作成をおすすめします。

3.相続登記の必要書類を準備する

法務局へ相続登記を申請する前に、必要書類を揃えましょう。詳しくは、以下の一覧表をご確認ください。

必要書類取得方法
戸籍謄本(被相続人、すべての法定相続人)本籍地以外の役所窓口でも全国的に取得可能
被相続人の除籍謄本本籍地以外の役所窓口でも全国的に取得可能
山林の相続人の住民票役所窓口、コンビニ、オンライン請求 など
山林の相続人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード など)本人が用意
固定資産課税明細書固定資産税の納付通知書に同封されている。毎年4〜5月に届く
遺言書(※ある場合)ある場合は相続人が保管
遺産分割協議書(※ある場合)ある場合は相続人が保管
法定相続人の印鑑証明書(※遺産分割協議書を作成した場合)役所窓口、コンビニ、オンライン請求 など。各法定相続人が用意し、法務局に申請する相続人が保管

4.「登記申請書」を用意する

登記申請書とは、山林の名義人変更について記載し、法務局へ提出する書類です。法務局の公式サイトから、申請書類をダウンロード・印刷できます。また、登記申請書の書き方を記した「登記手続ハンドブック」も公開されています。事前にダウンロードして記入する際は、ハンドブックの案内を参考にしてみてください。

▼書式ダウンロードはこちら

法務局:不動産登記の申請書様式について

▼法務局:相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック)

5.法務局で相続登記を申請する

相続登記の申請は、法務局の窓口、郵送、Webサイトから行えます。ただし、Webサイトからの申請であっても、必要書類の郵送が必要です。まとめて申請を終えたい場合、窓口または郵送を選びましょう。相続登記を申請する際は、登録免許税を支払います。登録免許税額は、次の計算式で求められます。

不動産の固定資産税評価額 × 0.4%=登録免許税額

固定資産税評価額は、毎年4〜5月頃に送付される「固定資産税の納税通知書」に記載されています。

6.市町村へ「森林の土地の所有者届出書」を提出する

相続登記の手続き後は、市町村へ「森林の土地の所有者届出書」を忘れずに提出しましょう。「土地の所有者となった日から90日以内」に、山林がある市町村へ届出書を提出します。また、提出する際は、以下の書類の添付が必要です。

  • 登記事項証明書または土地売買契約書
  • 土地の位置を示す図面

届出書の書式は林野庁の公式サイトに公開されているので、可能であればダウンロードして記載しておくといいでしょう。

▼林野庁:森林の土地の所有者届出制度

7.森林組合へ報告・加入する

法律上の義務はありませんが、山林の名義変更後は森林組合への相続の報告および新規加入がおすすめです。森林組合とは、林業事業者や山林の所有者で構成される組織です。山林を相続しても、活用方法が見つからないケースはよくあります。森林組合に加入することで、山林の買主や借主と仲介してもらえる可能性があります。スムーズに山林を手放したい人は、森林組合への加入を検討してみてください。

山林の相続時に名義変更するメリット

相続した山林の名義変更には、さまざまな手続きをしなくてはいけません。面倒な作業をしてまで、相続時に山林の名義を変えるメリットはあるのでしょうか。具体的なメリットを3つ紹介します。

1.スムーズに山林を売買・譲渡できる

山林がいらない場合、名義変更をしておくと売買や譲渡を円滑に行えます。相続登記は3年以内に行えばいいからといって放置していると、思わぬタイミングで山林の買い手・借り手が見つかるかもしれません。山林を引き取ってくれる人が現れてから相続登記を行う場合、売買や賃貸の契約と並行して進めることになります。トラブルや契約ミスにつながるリスクがあるため、あらかじめ名義変更は済ませておくべきです。

2.山林を活用して収益を得られる

相続した山林は、次のような活用が可能です。

  • 別荘の建設
  • 太陽光発電の設備設置
  • キャンプ場や農園などの経営
  • 林業や不動産などの事業者への貸与

名義変更をしていないと、山林を活用する際に相続登記などの手続きから始めなくてはいけません。手続きが遅れれば活用の機会を失うおそれもあるため、事前の名義変更が大切です。

3.「相続土地国庫帰属制度」で山林のみ手放せる

相続時にきちんと名義変更をしておけば、手に余る山林を「相続土地国庫帰属制度」によって国に引き取ってもらえます。相続土地国庫帰属制度の利用には10年分の管理費用の納付が必要ですが、自身で山林を管理したり、買い手を探したりする手間がかかりません。さらに、相続放棄のように全遺産を引き継げなくなるわけではなく、山林のみを手放せます。「山林はいらないけど他の遺産はほしい」とお悩みであれば、当制度を活用してみてください。

いらない山林を相続してお困りの方は、以下の記事もぜひご覧ください。

(「山林 相続 いらない」への内部リンク)

山林の相続時に名義変更をしないとどうなる?

山林の相続時に名義変更をしないと、なにか困りごとはあるのでしょうか。山林の名義変更をしないことによる3つのデメリットやリスクを解説します。

1.10万円以下の過料が課せられる場合がある

山林を相続したにもかかわらず名義変更をしなければ、10万円以下の過料が課せられる場合があります。相続登記と森林の所有者届出制度は、それぞれルールを設けています。

名義変更手続きの種類手続きの期限罰則
相続登記山林の取得を知った日から3年以内もしくは、遺産分割の成立から3年以内10万円以下の過料
森林の所有者届出制度山林の所有者となった日から90日以内10万円以下の過料

「10万円以下の過料」といった罰則は共通していますが、期限が異なる点に注意しましょう。

2.相続人が増大し登記が難しくなる

山林の名義変更せずに長年放置すると、将来的に山林の相続人が増大する可能性があります。親族の子どもや孫が増えれば、山林の相続人も何十人と増加するかもしれません。いつの間にか権利関係が複雑化し、相続登記をする際にすべての相続人の同意を得る手間が増大します。将来的な手間を回避するためには、後回しにせずすばやく山林の名義変更をすることが重要です。

3.山林の売却や活用ができない

相続した山林の名義変更をしていないと、原則として売却や活用ができません。山林売買サービスなどの仲介事業者に売却を依頼するだけなら可能です。しかし、実際に売買契約を結ぶまでには、名義変更を完了している必要があります。加えて、名義変更をしていなければ、国に山林を返す「相続土地国庫帰属制度」も利用できません。当制度の対象者は相続人のみなため、山林を手放すにも相続登記で名義変更が必須になります。

まとめ

山林を相続する際は、法務局にて相続登記による名義変更を行いましょう。また、山林は相続登記だけでなく、山林がある市町村への「森林の土地の所有者届出書」の提出も求められます。名義変更に必要な手続きが2種類あるため、どちらか一方を忘れないようにしましょう。相続した山林の売却や国への返却にも名義変更が必要となるため、あえて名義変更をしないメリットはないと言えます。